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東京地方裁判所 昭和43年(特わ)36号 判決 1968年6月27日

本店所在地

東京都中央区築地五丁目二番一号

株式会社 大善

(右代表取締役 寳井辰男)

本籍

東京都中央区日本橋小舟町一丁町一丁目二番地五

住居

同都世田谷区玉川奥沢町二丁目七六番地

株式会社大善代表取締役

寳井辰男

明治三七年三月二五日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官稲垣久一郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告株式会社大善を罰金五〇〇万円に、被告人寳井辰男を懲役三月に各処する。

但し、被告人寳井辰男に対し、本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告株式会社大善は、東京都中央区築地五丁目二番一号に本店を置き、鮮魚及び魚介類の販売等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人寳井辰男は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は右会社の業務に関し、法人税を免れるため売上を除外して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第一修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)記載のとおり、三、一九八万九、九一一円であつてこれに対する法人税額は一、一九六万六、八〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年二月二六日、東京都中央区新富町三丁目三番地所在の所轄京橋税務署において同署長に対し、所得金額は四八一万一、六九五円でありこれに対する法人税額は一六三万九、〇四〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、〇三二万七、七六〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した

第二、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第二修正貸借対照表(昭和四〇年一二月三一日現在の分)記載のとおり、三、一〇三万一、〇〇〇円であつてこれに対する法人税額は一、一二三万四、二八〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年二月二八日、前記京橋税務署において同署長に対し、所得金額は九〇一万八、九六三円でありこれに対する法人税額は三〇八万九、八〇〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額八一四万四、四八〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、登記官佐野直作作成の登記簿謄本

一、大川常世の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、大蔵事務官荒川浩平作成の法人税額計算書二通(但し、昭和四二年九月二六日付)

一、押収にかかる法人税額確定申告書四綴(昭和四三年押第四七六号の一ないし四)並びに売上仕入等月別一覧表一綴(同号の一〇)

一、被告株式会社大善代表取締役寳井辰男作成の上申書三通(昭和四二年七月二八日付のもの二通、同月二九日付のもの一通)

一、被告人寳井辰男の大蔵事務官に対する質問てん末書一二通並びに検察官に対する供述調書三通

一、被告人宝井辰男の当公判廷における供述

(二)、別紙第一、第二修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

(1)、銀行預金について

一、三菱銀行自由ケ丘支店長佐々木栄助、同築地支店長二川静男、同羽田支店長豊田武、同本店長山科元、同町田支店長鈴木孝三郎、同大森支店長青野清、同八重洲口支店長小西達司、同品川駅前支店長高西憲一、同駒込支店長梶原良平、常陽銀行銀座支店長石川操、霞ケ関信用組合滝野川支店長仁平与四郎、東京都民銀行茅場町支店長谷重次、同日本橋支店長田村庄一、同銀座支店長高杉美種、日本勧業銀行築地支店長横山哲也、富士銀行東京中央市場支店長加藤五一郎、芝信用金庫日本橋支店長西山一義、共積信用金庫鳥越支店長金野修二、同金町支店長饗庭実、同葛西支店長飯田昭一、明和信用組合目黒支店長岡田文雄、大同信用金庫銀座支店長門脇源一、日本信託銀行田村町支店長平野弘各作成の「預金取引内容について」と題する書面

一、大蔵事務官荒川浩平作成の調査てん末書二通、公表決算外預金残高明細書並びに公表決算外銀行預金利息計算書

一、大蔵事務官中村英克作成の現金等現在高検査てん末書

一、唐木保の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一、押収にかかる元帳一綴(前同号の五)、銀行帳二綴(同号の七)、当座控帳八綴(同号の八)、山一証券計算書一袋(同号の九)、手帳一綴(同号の一三)、預金期日表等一綴(同号の一五)、銀行関係メモ計二綴(同号の二一、二二)、貸金庫借用領収証二通(同号の二七)、諸期日帳一綴(同号の三一)並びに定期預金メモ一綴(同号の三二)

一、被告株式会社大善代表取締役宝井辰男作成の「預金証書等の社外よりの預り分について」、「簿外定期積金解約金の簿外支給について」、「鮪魚腸骨売却代金の簿外支給について」、「従業員の月掛預金に加算支給した簿外給与について」と各題する書面

(2)、売掛金について

一、押収にかかる現金書留空封筒一綴(前同号の一一)、売上帳一綴(同号の一二)、手帳二冊(同号の一六)並びに売上帳一綴(同号の一八)

一、被告株式会社大善代表取締役宝井辰男作成の上申書一通(昭和四二年八月一四日付)

(3)、保証金について、

一、井山常三郎の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、押収にかかる契約書等一綴(前同号の三〇)

(4)、貸倒引当金、価格変動準備金について、

一、京橋税務署長黒沢次郎作成の証明書

(5)、減価償却超過額について

一、宝井善次郎の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四二年七月一八日付)

一、被告株式会社大善代表取締役宝井辰男作成の上申書一通(昭和四二年八月一四日付)

(6)  貸付信託、金銭信託について、

一、三菱信託銀行本店営業第一部長長谷川太郎、住友信託銀行東銀座支店長宇佐美威各作成の「預金取引内容について」と題する書面

一、押収にかかる手帳一綴(前同号の一三)並びに銀行関係メモ一綴(同号の二一)

(7)、貸付金、未収利息について、

一、桑原末男作成の「(株)大善からの借入金について」と題する書面

一、押収にかかる手帳一綴(前同号の一三)、同手帳二冊(同号の一六)、売上帳一綴(同号の一八)、貸家賃貸借契約書等一綴(同号の一九)、別口勘定支払方法メモ一綴(同号の二〇)、銀行関係メモ一綴(同号の二一)並びに金銭借用証書一袋(同号の二八)

(8)、未納事業税について、

一、大蔵事務官荒川浩平作成の法人税額計算書二通(但し、昭和四二年一一月一〇日付)

一、押収にかかる税務関係書類一綴(前同号の六)

(9)、役員賞与について、

一、宝井善次郎、唐木保、桑原末男の各大蔵事務官に対する質問てん末書(但し、宝井、唐木、の分は各二通)

一、押収にかかる手帳一冊(前同号の一四)、銀行関係メモ一綴(同号の二一)、残高証明書一綴(同号の二四)並びに定款一綴(同号の二五)

一、被告株式会社大善代表取締役宝井辰男作成の「盆暮等簿外賞与支給について」、「簿外定期積金解約金の簿外支給について」、「鮪魚腸骨売却代金の簿外支給について」と各題する書面並びに上申書一通(昭和四二年八月一四日付)

(法令の適用)

被告人宝井辰男の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項に、各該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内において同被告人を懲役三月に処し、なお諸般の情状を考慮して刑法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

被告株式会社大善については、その代表者たる被告人宝井辰男が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に則り同法第四八条第一項の罰金刑を、また第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に則り同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断することとし、よつて同被告会社を罰金五〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(栽判官 近藤暁)

別紙第一

修正貸借対照表

株式会社 大善

昭和39年12月31日

<省略>

別紙第二

修正貸借対照表

株式会社 大善

昭和40年12月31日

<省略>

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